和楽多屋日記

伝統工芸・和雑貨の「和楽多屋」店長の日記。

残しておくべき“文化遺産”

「和楽多屋」は伝統工芸を多く扱っていますが、そういう工芸品ではないのですが、未来に残しておきたい、日本独特の“伝統文化品”(?)があります。「看板建築」もそのひとつです。

「看板建築」といっても、何のことか分からない方も多くいらっしゃることでしょう。そういう建築形式が東京を中心に発達した時期があったのです。「あった」と過去形なのは、今ではどんどんその姿を消しているからですが、2、3階建ての木造商店建築で、正面だけまるで看板を立てかけたように平面のファサード(建築物の正面の外観)がある建物のことです。中は住居、そして表で商売をされている商店に多くこの形式が見られました。

これがなかなか味があるのですね。ひとつにはファサードが平面ということがあり、それをキャンバスにまるで絵を描くようにさまざまな看板デザインが見られました。本屋さんなら本のマーク、傘屋さんなら傘のマーク、中には商売とはあまり関係なさそうなギリシャ神話の女神の像がレリーフとして刻まれていたり…。街の職人さんが作ったものですから、決して洗練されているとはいいがたいものがあるのですが、それだけに生活の香りがしながらも奇抜で看板としての機能を充分に果たすものでした。それは職人さんの心意気を充分に感じるもので、今日のキレイキレイの誰が作ったか分からないような建築物とは、まるで違うものだと思います。

時代と共にこれらの建築は消えつつあります。有名なデザイナーが建てた歴史的建築物なら保存運動も起きるでしょうが、これらの建築のほとんどは消えてなくなってしまうことでしょう。しかし、「文化」が人々の生活の生きた証とすれば、こういう建築物もどこかに保存しておくべきだと思います。“世界文化遺産”のように大げさにしなくても、どこかにひっそりとでも…。

スタッフ:MORI