和楽多屋日記

伝統工芸・和雑貨の「和楽多屋」店長の日記。

桜の森の満開の下

今年は暖冬の関係で、桜の開花が早まるようですね(といってもここ2、3日はたいへん寒い日が続いているのですが(^^;)桜が一斉に咲く姿は本当に華やかで美しいのですが、私はあるときから、桜を見て別の印象を持つようになったのです。

それは、坂口安吾の『桜の森の満開の下』という小説を読んでからでした。あらすじはこうです。

人の命を断つことなど何とも思わない山賊が、さらってきた女と過ごすようになります。この女は元々都の人間なので、昔を懐かしんで都に帰りたいと山賊にせがみ、都で暮らすようになります。そこで山賊はその女のために人を殺めては金品を盗みます。一方、女はその殺された人間の首を部屋中に並べて「首遊び」を楽しむようになるのです。
やがて、都会の生活に飽きてきた山賊は、女を背中におぶって都から山へ帰ろうとしますが、途中、桜の道の下で、女は鬼の姿に変身して男を襲います。男は鬼を背中から振り落として絞め殺しますが、最期の瞬間、鬼は女の姿に戻り、やがて桜の花びらの中へと消えていきます。あとは満開の桜の花びらが散る中で山賊が一人取り残されている…

この小説を読んで以来、私は満開の桜を見ると、なぜかぞっとしてしまうのです。そういえば、桜って美しいけれど、どこか幻想的で現実離れしたイメージはないですか? 美しすぎるものは、どこかに残酷さを兼ね備えている…そんな気がするのですが、いかがでしょう?

和楽多屋スタッフ:MORI