和楽多屋日記

伝統工芸・和雑貨の「和楽多屋」店長の日記。

版画の世界

warakutaya2007-11-27

日本で版画といえば、やはり浮世絵を代表とする木版画を連想する人が多いでしょう。浮世絵は19世紀にヨーロッパの画家達に多大なる影響を与え、ゴッホなどが自らの作品に浮世絵の世界を取り入れたばかりか、ドビュッシー北斎の『神奈川沖波裏』に触発されて『交響詩“海”』を作曲するなど、絵画以外の分野にも影響を与えました。

しかし、もちろん版画は木版画だけではありません。版画は大きく分けて4つの仕組み、つまり凸版画、凹版画、平版画、孔版画に分類できますが、浮世絵を制作する木版画はその中の凸版画に分類されます。凸版画はそのほかにも、紙版画や身近なところでは芋を彫って版にする芋版画などがありますね。版の出っ張ったところにインクや絵の具をつけ、紙などに刷るという一番シンプルな版画です。

凹版画は逆に版の窪んだところにインクを埋めて、紙などに刷るという方法で、エッチングなどが有名です。

平版画は石版画、つまりリトグラフのことで、簡単に言えば水と油の反発を利用して刷ります。版画ではありませんが、一般の商業印刷で使うオフセットのほとんどもこの平版画の技法を利用しています。

最後の孔版画は、版の穴(孔)をインクが透過するすることで刷る方法でシルクスクリーンなどがその代表です。その技法そのものは長く商業印刷として利用されてきたので、芸術としての版画の歴史は浅いと言えますが、多くの現代作家たちに注目され、ポップアートアンディ・ウォーホルや日本では横尾忠則氏がシルクスクリーンの作品を発表しています。

実は『和楽多屋』で紹介している「型染版画」もこの孔版画の一つです。孔版画の特徴は、その色彩の鮮やかさ。その他の版画技法が版にインクや絵の具を乗せてから紙にうつすのに比べ、孔版画は版の孔から透過してきたインクや絵の具が直接、紙にのることになります。そのために冴えた色合いになり、現代作家が注目するのも頷けます。

しかし「型染版画」の技法自体の歴史は古く、奈良時代正倉院の御物に摺絵や臈纈(ろうけつ)、夾纈(きょうけつ)の意匠が伝えられています。さらに時代は下って江戸時代には江戸小紋などの染め物に型染め技法は使われています(このあたりの詳しい歴史は伊藤紘先生の文にあるので、参考にしてくださいね。→http://www.warakutaya.com/katazomehanga_about.html)。

つまり、型染版画は昔ながらの伝統技法を活用した現代アートということができるわけです。伝統を見直すことから新しい表現が生まれ、現代に甦った芸術、古くて新しい芸術、それが「型染版画」なんですね。

伊藤紘先生の「型染版画」の世界はこちらから
>> http://www.warakutaya.com/katazomehanga.html

和楽多屋スタッフ:MORI