和楽多屋日記

伝統工芸・和雑貨の「和楽多屋」店長の日記。

使い手がもっとわがままを

日曜日(6日)のNHK教育の放送で、『日曜フォーラム「“和”を未来につなぐ〜伝統工芸を暮らしにいかす〜」』という番組をやっていました。和ブームと言われながら、昭和58年をピークに、生産高が減り続けている伝統工芸品の世界。改めてその良さや、未来へ継承していく活動などを話し合っていくという内容でした。

出演者は漆芸の人間国宝である小森邦衞氏、東京芸術大学教授の竹内順一氏、工業デザイナーの喜多俊之氏、そして女優の山口智子さん。

いろいろ興味深い専門的な立場からのお話も聞けたのですが、一番印象に残ったのは、山口智子さんのお話でした。

彼女は自分と伝統工芸品の出合いのきっかけとなった一つの漆塗りのコーヒーカップを取り出して、こう説明しました。最初は和の伝統工芸品と自分の間には、何か距離があると思っていたが、職人さんにわがままを言って自分に使いやすいようなデザインの漆塗りのコーヒーカップを作ってもらった。そうしたら、それが実に趣があって、使いやすくて、気に入り、それから伝統工芸品に目覚めた、ということでした。

伝統工芸の職人さんって、勝手に無口で頑固みたいなイメージを持ちがちですが、実際に使う側がいろいろ相談を持ちかけてみると、ほとんどの方が一生懸命それに応えようと努力してくださるそうです。

“伝統”なんて言葉が付いているから堅苦しくなって、特に若者は寄りつかないだけで、本来の工芸品という、普段使いの精神を改めて見直すべきではないのか。そこには、作り手と使い手のコミュニケーションがもっとあってもいいのではないか、むしろ積極的に使い手がわがままを作り手に向けてもいいのではないか、そんなことを考えてしまいました。

伝統工芸品って、あまりにも美しいので美術品として価値があるものも多いですが、その使い勝手のよさも抜群であり、もっともっと普段から使わないともったいないですからね(^^

和楽多屋スタッフ:MORI