和楽多屋日記

伝統工芸・和雑貨の「和楽多屋」店長の日記。

魂に響くような感動

先日、日本画の展覧会を観る機会がありました。色彩豊かな洋画もいいですが、しっとりとした色調の日本画も、なかなか見応えがあるものだと、改めて思いました。

筆の種類やその他描画技法の違いもあるのでしょうが、決定的に違うのはやはり絵の具。岩絵の具の微妙な色調は、それだけで何か魂に響くような感動がありました。

岩絵の具の歴史は古く、人類がはじめて描いたというアルタミラの洞窟壁画の絵の具は色のついた土らしく、これも岩絵の具といって間違いありません。岩絵の具は人類が初めて手にした絵の具というわけですね。日本でも高松塚古墳に使われている絵具は岩絵の具ということですから、かなり古くから使われていたことになります。

岩絵の具は、油絵の具に比べ色数も少ないのですが、粒子の細かさで同じ材料でも色調の明るい暗いを調整したりの工夫で、微妙な色合いを再現しています。今日では人工の岩絵の具もありますが、天然の岩絵の具は、自然に密着した風土の色ということができるわけですよね。

さきほど“魂に響くような感動”と書きました。人間も風土に密着して生きているわけですから、同じ風土の岩絵の具で感動するのは当然かもしれません。派手な色彩の絵はいくらでもあり、それに感動することもいくらでもあります。しかし、心の底に響くような感動は、意外とこんなシンプルな理由からかもしれません。

スタッフ:MORI