和楽多屋日記

伝統工芸・和雑貨の「和楽多屋」店長の日記。

「恋しくて」村上春樹、なぜ黒猫なのか?

    
「恋しくて」村上春樹氏が選んで訳した短編9篇と、書き下ろし短編1篇が収録された恋愛小説のアンソロジーです。
本のカバーに描かれているのは、竹久夢二の代表作『黒船屋』です。何故この絵が本のタイトル「恋しくて」に選ばれたか大変気になりました。
夢二式美人と呼ばれる夢二特有の線の細い美女。胸元に抱かれているのは、彼女にすがるように身を預ける黒猫。長いしっぽを絡めるように、女性に抱きしめられています。なぜ黒猫なのか?そこに夢二はどのような思いを託したのでしょうか?なにやら意味がありそうです。黒猫はこの女性を独占したいと思う、夢二自身ではないかとも言われています。
男と女がいる限りラブ・ストーリーはいつまでも続きます。村上春樹氏は初心者の震えも、上級者の迷いも、「恋する心」に変わりはありませんと言ってます。夢二のStory&Goodsを紹介している者として、この本に竹久夢二の「黒船屋」の絵が選ばれたことは大変嬉しく、またピッタリあてはまっているとも思いました。
『恋しくて - TEN SELECTED LOVE STORIES』(中央公論新社)値段は1890円。