和楽多屋日記

伝統工芸・和雑貨の「和楽多屋」店長の日記。

葛飾北斎88歳のとき。

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弘法大師修法図」(こうぼうだいししゅうほうず)

 晩年における最大級の肉筆画「弘法大師修法図」西新井大師所蔵。畳三畳分もある最大級の肉筆画です。

漆黒の闇を背景に、左には筋肉猛々しい赤鬼、右にはキノコに覆われた古木、その木に絡みつく犬が唸りを上げ鬼と睨み合い、中央には疫病を鬼に見立て、疫病退散のために祈る僧侶、弘法大師空海…何か幻想的な世界が描かれていますが…実はその正体は、運命と戦う北斎自身の姿ではないのかと。

  

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     富嶽三十六景「神奈川沖浪裏」

 さらに、この絵は富嶽三十六景「神奈川沖浪裏」の構図と重なることに気付きます。

覆いかぶさるような赤鬼はあの大きな浪、右側の木に絡みつく犬は人を乗せ、浪に必至に抵抗する船に、そして中央で毅然と構える姿の弘法大師は富士そのものではないか。

まさに北斎の奇抜で大胆な発想が遠近法の力で遺憾なく発揮されています。
北斎88歳の作品という。年齢を微塵も感じさせない力強さ、凄さは大きな驚きというほかありませんし、益々北斎が好きになります。