和楽多屋日記

伝統工芸・和雑貨の「和楽多屋」店長の日記。

日本画”でいいの?

日本の絵画といえば「日本画」ですが、この呼称にはいつも疑問を感じてしまいます。というのも、この言葉は明らかに「(西)洋画」に対する言葉で、「油絵」という画材から来る言葉があるなら、「膠絵」あるいは「顔料絵」というふうに言ってもいいわけです(「膠絵(にかわえ)」という言葉は存在しますが、めったに使われることはありません)。

それもそのはず、この「日本画」という言葉が使われるようになったきっかけは、明治15年に「龍池会(りゅうちかい:後の日本芸術協会)」でアメリカ人のフェノロサが行った「美術真説」という講演なんですね。その講演でフェノロサは、西洋の油絵よりも、いかに日本画が優れているかを力説したわけですが、結局「日本画」は西洋人の視点から生まれた言葉だったというわけです。

同じような言葉に「大和絵」というものがあります。こちらはさらに歴史をさかのぼり、上代において中国の主題を取り上げた「唐絵」に対して、日本の風物や物語を描いたものが「大和絵」と呼ばれたわけです。

まあ、日本の美術がその古くは中国や朝鮮、そして近代においては西洋というふうに、外国美術を受け入れつつ発展したという経緯があるため、こういう「日本画」や「大和絵」という呼び方は仕方ないのかもしれません。

しかしそれ以前、たとえば縄文時代の土器における大胆な文様といい、江戸時代の浮世絵といい、一方は日本独自の生命力、そしてもう一方は逆に西洋美術に影響を与えるといったパワーを日本の美術は持っていると思います。それを考えれば、果たして洋画や油絵の対比としての「日本画」という言葉でいいのか、もっと“オンリーワン”なネーミングはないのかと、ふと思ってしまうのです。

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スタッフ:MORI